日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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曾谷殿御返事 /弘安二年八月 五十八歳御作

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地神天神竜神日月帝釈大梵王二乗菩薩仏は仏法をなめて身とし魂とし給ふ、例せば乃往過去に輪陀王と申す大王ましましき一閻浮提の主なり賢王なり、此の王はなに物をか供御とし給うと申せば白馬の鳴声をきこしめして身も生長し身心も安穏にしてよをたもち給う、れいせば蝦蟆と申す虫の母のなく声を聞いて生長するがごとし、秋のはぎのしかの鳴くに華のさくがごとし、象牙草のいかづちの声にはらみ柘榴の石にあふてさかうるがごとし、されば此の王白馬ををほくあつめてかはせ給ふ、又此の白馬は白鳥をみてなく馬なれば、をほくの白鳥をあつめ給いしかば我が身の安穏なるのみならず百官万乗もさかへ天下も風雨時にしたがひ他国もかうべをかたぶけてすねんすごし給うにまつり事のさをいにやはむべりけん又宿業によつて果報や尽きけん千万の白鳥一時にうせしかば又無量の白馬もなく事やみぬ、大王は白馬の声をきかざりしゆへに華のしぼめるがごとく月のしよくするがごとく、御身の色かはり力よはく六根もうもうとしてぼれたるがごとくありしかば、きさきももうもうしくならせ給い百官万乗もいかんがせんとなげき、天もくもり地もふるひ大風かんぱちしけかちやくびように人の死する事肉はつか骨はかはらとみへしかば他国よりもをそひ来れり、此の時大王いかんがせんとなげき給いしほどにせんする所は仏神にいのるにはしくべからず、此の国にもとより外道をほく国国をふさげり、又仏法という物ををほくあがめをきて国の大事とす、いづれにてもあれ白鳥をいだして白馬をなかせん法をあがむべし、まづ外道の法にをほせつけて数日をこなはせけれども白鳥一疋もいでこず白馬もなく事なし、此の時外道のいのりをとどめて仏教にをほせつけられけり、其の時馬鳴菩薩と申す小僧一人ありめしいだされければ此の僧の給はく国中に外道の邪法をとどめて仏法を弘通し給うべくば馬をなかせん事やすしといふ、勅宣に云くをほせのごとくなるべしと、其の時に馬鳴菩薩三世十方の仏にきしやうし申せしかばたちまちに白鳥出来せり、白馬は白鳥を見て一こへなきけり、大王馬の声を一こへきこしめして眼を開き給い白鳥二ひき乃至百千いできたりければ


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