日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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曾谷殿御返事 /弘安二年八月 五十八歳御作

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此の人金剛頂経蘇悉地経の二部の疏をつくりて前唐院と申す寺を叡山に申し立て畢んぬ、此れには大日経第一法華経第二其の中に弘法のごとくなる過言かずうべからず、せむぜむにせうせう申し畢んぬ、智証大師又此の大師のあとをついでをんじやう寺に弘通せり、たうじ寺とて国のわざはいとみゆる寺是なり、叡山の三千人は慈覚智証をはせずば真言すぐれたりと申すをばもちいぬ人もありなん、円仁大師に一切の諸人くちをふさがれ心をたぼらかされてことばをいだす人なし、王臣の御きえも又伝教弘法にも超過してみへ候へばえい山七寺日本一州一同に法華経は大日経にをとりと云云、法華経の弘通の寺寺ごとに真言ひろまりて法華経のかしらとなれり、かくのごとくしてすでに四百余年になり候いぬ、やうやく此の邪見ぞうじやうして八十一乃至五の五王すでにうせぬ仏法うせしかば王法すでにつき畢んぬ。

あまつさへ禅宗と申す大邪法念仏宗と申す小邪法真言と申す大悪法此の悪宗はなをならべて一国にさかんなり、天照太神はたましいをうしなつてうぢごをまほらず八幡大菩薩は威力よはくして国を守護せずけつくは他国の物とならむとす、日蓮此のよしを見るゆへに仏法中怨倶堕地獄等のせめをおそれて粗国主にしめせども、かれらが邪義にたぼらかされて信じ給う事なし還つて大怨敵となり給いぬ法華経をうしなふ人国中に充満せりと申せども人しる事なければただぐちのとがばかりにてある事今は又法華経の行者出来せり日本国の人人癡の上にいかりををこす邪法をあいし正法をにくむ、三毒がうじやうなる一国いかでか安穏なるべき、壊劫の時は大の三災をこる、いはゆる火災水災風災なり、又減劫の時は小の三災をこる、ゆはゆる飢渇疫病合戦なり、飢渇は大貪よりをこりやくびやうはぐちよりをこり合戦は瞋恚よりをこる、今日本国の人人四十九億九万四千八百二十八人の男女人人ことなれども同じく一の三毒なり、所謂南無妙法蓮華経を境としてをこれる三毒なれば人ごとに釈迦多宝十方の諸仏を一時にのりせめ流しうしなうなり、是れ即ち小の三災の序なり。


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満月城岡山ポケット版御書