日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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秋元御書

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過去遠遠劫より今に仏に成らざりける事は加様の事に恐れて云い出さざりける故なり、未来も亦復是くの如くなるべし今日蓮が身に当りてつみ知られて候、設い此の事を知る弟子等の中にも当世の責のおそろしさと申し露の身の消え難きに依りて或は落ち或は心計りは信じ或はとかうす、御経の文に難信難解と説かれて候が身に当つて貴く覚え候ぞ、謗ずる人は大地微塵の如し信ずる人は爪上の土の如し、謗ずる人は大海進む人は一・。

 天台山に竜門と申す所あり其の滝百丈なり、春の始めに魚集りて此の滝へ登るに百千に一つも登る魚は竜と成る、此の滝の早き事矢にも過ぎ電光にも過ぎたり、登りがたき上に春の始めに此の滝に漁父集りて魚を取る網を懸くる事百千重或は射て取り或は酌んで取る、鷲・鴟梟虎狼犬狐集りて昼夜に取り・ふなり十年二十年に一つも竜となる魚なし、例せば凡下の者の昇殿を望み下女が后と成らんとするが如し、法華経を信ずる事此にも過ぎて候と思食せ、常に仏禁しめて言く何なる持戒智慧高く御坐して一切経並に法華経を進退せる人なりとも法華経の敵を見て責め罵り国主にも申さず人を恐れて黙止するならば必ず無間大城に堕つべし、譬えば我は謀叛を発さねども謀叛の者を知りて国主にも申さねば与同罪は彼の謀叛の者の如し、南岳大師の云く「法華経の讎を見て呵責せざる者は謗法の者なり無間地獄の上に堕ちん」と、見て申さぬ大智者は無間の底に堕ちて彼の地獄の有らん限りは出ずべからず、日蓮此の禁めを恐るる故に国中を責めて候程に一度ならず流罪死罪に及びぬ、今は罪も消え過も脱れなんと思いて鎌倉を去りて此の山に入つて七年なり。

 此の山の為体日本国の中には七道あり七道の内に東海道十五箇国、其の内に甲州飯野御牧波木井の三箇郷の内波木井と申す、此の郷の内戌亥の方に入りて二十余里の深山あり、北は身延山南は鷹取山西は七面山東は天子山なり、板を四枚つい立てたるが如し、此の外を回りて四つの河あり


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満月城岡山ポケット版御書