日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

秋元御書

<前 P1078 次>


北より南へ富士河西より東へ早河此れは後なり、前に西より東へ波木井河の内に一つの滝あり身延河と名けたり、中天竺の鷲峰山を此の処へ移せるか将又漢土の天台山の来れるかと覚ゆ、此の四山四河の中に手の広さ程の平かなる処あり、爰に庵室を結んで天雨を脱れ木の皮をはぎて四壁とし、自死の鹿の皮を衣とし、春は蕨を折りて身を養ひ秋は果を拾いて命を支へ候つる程に、去年十一月より雪降り積て改年の正月今に絶る事なし、庵室は七尺雪は一丈四壁は冰を壁とし軒のつららは道場荘厳の瓔珞の玉に似たり、内には雪を米と積む、本より人も来らぬ上雪深くして道塞がり問う人もなき処なれば現在に八寒地獄の業を身につくのへり、生きながら仏には成らずして又寒苦鳥と申す鳥にも相似たり、頭は剃る事なければうづらの如し、衣は冰にとぢられて鴦鴛の羽を冰の結べるが如し、かかる処へは古へ眤びし人も問わず弟子等にも捨てられて候いつるに此の御器を給いて雪を盛りて飯と観じ水を飲んでこんずと思う、志のゆく所思い遣らせ給へ又又申すべく候、恐恐謹言。

  弘安三年正月二十七日             日蓮花押

%   秋元太郎兵衛殿御返事


<前 P1078 次>


満月城岡山ポケット版御書