日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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四条金吾殿御返事

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諸法をば多宝に約し実相をば釈迦に約す、是れ又境智の二法なり多宝は境なり釈迦は智なり、境智而二にしてしかも境智不二の内証なり、此等はゆゆしき大事の法門なり煩悩即菩提生死即涅槃と云うもこれなり、まさしく男女交会のとき南無妙法蓮華経ととなふるところを煩悩即菩提生死即涅槃と云うなり、生死の当体不生不滅とさとるより外に生死即涅槃はなきなり、普賢経に云く「煩悩を断ぜず五欲を離れず諸根を浄むることを得て諸罪を滅除す」止観に云く「無明塵労は即是菩提生死は即涅槃なり」寿量品に云く「毎に自ら是の念を作す、何を以てか衆生をして無上道に入り、速に仏身を成就することを得せしめん」と方便品に云く「世間の相常住なり」等は此の意なるべし、此くの如く法体と云うも全く余には非ずただ南無妙法蓮華経の事なり、かかるいみじくたうとき法華経を過去にてひざのしたにをきたてまつり或はあなづりくちひそみ、或は信じ奉らず、或は法華経の法門をならうて一人をも教化し法命をつぐ人を悪心をもつてとによせかくによせおこつきわらひ、或は後生のつとめなれども先今生かなひがたければしばらくさしをけなんどと無量にいひうとめ謗ぜしによつて今生に日蓮種種の大難にあうなり。

 諸経の頂上たる御経をひきくをき奉る故によりて現世に又人にさげられ用いられざるなり、譬喩品に「人にしたしみつくとも人心にいれて不便とおもふべからず」と説きたり、然るに貴辺法華経の行者となり結句大難にもあひ日蓮をもたすけ給う事、法師品の文に「遣化四衆比丘比丘尼優婆塞優婆夷」と説き給ふ此の中の優婆塞とは貴辺の事にあらずんばたれをかささむ、すでに法を聞いて信受して逆はざればなり不思議や不思議や、若し然らば日蓮法華経の法師なる事疑なきか、則ち如来にもにたるらん行如来事をも行ずるになりなん。

 多宝塔中にして二仏並坐の時上行菩薩に譲り給いし題目の五字を日蓮粗ひろめ申すなり、此れ即ち上行菩薩の御使いか、貴辺日蓮にしたがひて法華経の行者として諸人にかたり給ふ是れ豈流通にあらずや、


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満月城岡山ポケット版御書