日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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善無畏抄 /建治元年 五十四歳御作

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白気立ち昇り鉢より竜出でて虚空に昇り忽に雨を降す、此の如くいみじき人なれども一時に頓死して有りき、蘇生りて語つて云く我死つる時獄卒来りて鉄の繩七筋付け鉄の杖を以て散散にさいなみ閻魔宮に到りにき、八万聖教一字一句も覚えず唯法華経の題名許り忘れざりき題名を思いしに鉄の繩少し許ぬ息続いて高声に唱えて云く今此三界皆是我有其中衆生悉是吾子而今此処多諸患難唯我一人能為救護等云云、七つの鉄の繩切れ砕け十方に散す閻魔冠を傾けて南庭に下り向い給いき、今度は命尽きずとて帰されたるなりと語り給いき、今日蓮不審して云く善無畏三蔵は先生に十善の戒力あり五百の仏陀に仕えたり、今生には捨て難き王位をつばきを捨てるが如く之を捨て幼少十三にして出家し給い、月支国を廻りて諸宗を習い極め天の感を蒙り化道の心深くして震旦国に渡りて真言の大法を弘めたり、一印一真言を結び誦すれば過去現在の無量の罪滅しぬらん何の科に依りて閻魔の責をば蒙り給いけるやらん不審極り無し、善無畏三蔵真言の力を以て閻魔の責を脱れずば天竺震旦日本等の諸国の真言師地獄の苦を脱る可きや、委細に此の事を勘えたるに此の三蔵は世間の軽罪は身に御せず諸宗並びに真言の力にて滅しぬらん、此の責は別の故無し法華経誹謗の罪なり、大日経の義釈を見るに此の経は是れ法王の秘宝妄りに卑賎の人に示さず、釈迦出世の四十余年に舎利弗慇懃の三請に因って方に為に略して妙法蓮華の義を説くが如し、今此の本地の身又是れ妙法蓮華最深秘処なり、故に寿量品に云く「常に霊鷲山及び余の諸の住処に在り、乃至我が浄土は毀れざるに而も衆は焼き尽くと見る」と、即ち此の宗瑜伽の意なるのみ、又「補処の菩薩の慇懃三請に因って方に為に之を説く」等云云、此の釈の心は大日経に本迹二門開三顕一開近顕遠の法門有り、法華経の本迹二門の如し、此の法門は法華経に同じけれども此の大日経に印と真言と相加わりて三密相応せり、法華経は但意密許りにて身口の二密闕けたれば法華経をば略説と云い大日経をば広説と申す可きなりと書かれたり、此の法門第一の・謗法の根本なり、此の文に二つの・り有り、


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満月城岡山ポケット版御書