日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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善無畏抄 /建治元年 五十四歳御作

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又義釈に云く「此の経横に一切の仏教を統ぶ」等云云、大日経は当分随他意の経なるを・りて随自意跨節の経と思えり、かたがた・りたるを実義と思し食す故に閻魔の責をば蒙りたりしか智者にて御座せし故に此の謗法を悔い還えして法華経に飜りし故に此の責を免がるるか、天台大師釈して云く「法華は衆経を総括す乃至軽慢止まざれば舌口中に爛る」等云云、妙楽大師云く「已今当の妙此に於て固く迷えり舌爛止まざるは猶華報と為す、謗法の罪苦長劫に流る」等云云、天台妙楽の心は法華経に勝れたる経有りと云はむ人は無間地獄に堕つ可しと書かれたり善無畏三蔵は法華経と大日経とは理は同じけれども事の印真言は勝れたりと書かれたり、然るに二人の中に一人は必悪道に堕つ可しとをぼふる処に天台の釈は経文に分明なり、善無畏の釈は経文に其証拠見えず、其の上閻魔王の責の時我が内証の肝心と思食す大日経等の三部経の内の文を誦せず、法華経の文を誦して此の責を免れぬ、疑無く法華経に真言勝ると思う・を飜したるなり其の上善無畏三蔵の御弟子不空三蔵の法華経の儀軌には大日経金剛頂経の両部の大日をば左右に立て法華経多宝仏をば不二の大日と定めて両部の大日をば左右の巨下の如くせり。

 伝教大師は延暦二十三年の御入唐霊感寺の順暁和尚に真言三部の秘法を伝う、仏滝寺の行満座主に天台止観宝珠を請け取り顕密二道の奥旨を極め給いたる人、華厳三論法相律宗の人人の自宗我慢の辺執を倒して天台大師に帰入せる由を書かせ給いて候、依憑集守護章秀句なむど申す書の中に善無畏金剛智不空等は天台宗に帰入して智者大師を本師と仰ぐ由のせられたり、各各思えらく宗を立つる法は自宗をほめて他宗を嫌うは常の習なりと思えり、法然なむどは又此例を引きて曇鸞の難易道綽の聖道浄土善導が正雑二行の名目を引きて天台真言等の大法を念仏の方便と成せり、此等は牛跡に大海を入れ県の額を州に打つ者なり、世間の法には下剋上背上向下は国土亡乱の因縁なり、仏法には権小の経経を本として実経をあなづる、大謗法の因縁なり恐る可し恐る可し。


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満月城岡山ポケット版御書