日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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妙一女御返事

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論の中に秘蔵肝心の論なり此の中に諸教と謂うは他受用身及び変化身等の所説の法諸の顕教なり、是れ三摩地の法を説くとは自性法身の所説秘密真言の三摩地の行是なり金剛頂十万頌の経等と謂う是なり」

 問うて云く此の両大師所立の義水火なり何れを信ぜんや、答えて云く此の二大師は倶に大聖なり同年に入唐して両人同じく真言の密教を伝受す、伝教大師の両界の師は順暁和尚弘法大師の両界の師は慧果和尚順暁慧果の二人倶に不空の御弟子なり、不空三蔵の大日如来六代の御弟子なり、相伝と申し本身といひ世間の重んずる事日月のごとし、左右の臣にことならず末学の膚にうけて是非しがたし、定めて悪名天下に充満し大難を其の身に招くか然りと雖も試に難じて両義の是非を糾明せん、問うて云く弘法大師の即身成仏は真言に限ること何れの経文何れの論文ぞや、答えて云く弘法大師は竜樹菩薩の菩提心論に依るなり、問うて云く其の証拠如何、答えて云く弘法大師の二教論に菩提心論を引いて云く「唯真言法の中のみ乃至諸教の中に於て闕いて書さず」云云、問うて云く経文有りや、答えて云く弘法大師の即身成仏義に云く「六大無礙にして常に瑜伽なり四種の曼荼各離れず三密加持すれば速疾に顕る重重にして帝網の如くなるを即身と名く、法然として薩般若を具足す心王心数刹塵に過たり各五智無際智を具す円鏡力の故に実の覚智なり」等云云、疑つて云く此の釈は何れの経文に依るや、答えて云く金剛頂経大日経等に依る、求めて云く其の経文如何、答えて云く弘法大師其の証文を出して云く「此の三昧を修する者は現に仏菩提を証す」文、又云く「此の身を捨てずして神境通を逮得し大空位に遊歩して身秘密を成す」文、又云く「我本より不生なるを覚る」文、又云く「諸法は本より不生なり」云云。

 難じて云く此等の経文は大日経金剛頂経の文なり、然りと雖も経文は或は大日如来の成正覚の文或は真言の行者の現身に五通を得るの文或は十回向の菩薩の現身に歓喜地を証得する文にして猶生身得忍に非ず何に況や即身成仏をや、但し菩提心論は一には経に非ず論を本とせば背上向下の科依法不依人の仏説に相違す。


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満月城岡山ポケット版御書