日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

教行証御書 /文永十二年三月 五十四歳御作

<前 P1282 次>


法華経に付いて不審有りと仰せらるる人わたらせ給はば存じ候なんど云つて、其の後は随問而答の法門申す可し、又前六箇条一一の難門兼兼申せしが如く日蓮が弟子等は臆病にては叶うべからず、彼れ彼れの経経と法華経と勝劣浅深成仏不成仏を判ぜん時爾前迹門の釈尊なりとも物の数ならず何に況や其の以下の等覚の菩薩をや、まして権宗の者どもをや、法華経と申す大梵王の位にて民とも下し鬼畜なんどと下しても其の過有らんやと意を得て宗論すべし。

又彼の律宗の者どもが破戒なる事山川の頽るるよりも尚無戒なり、成仏までは思もよらず人天の生を受くべしや、妙楽大師云く「若し一戒を持てば人中に生ずることを得若し一戒を破れば還て三途に堕す」と、其の外斎法経正法念経等の制法阿含経等の大小乗経の斎法斎戒今程の律宗忍性が一党誰か一戒を持てる還堕三途は疑無し、若しは無間地獄にや落ちんずらん不便なんど立てて宝塔品の持戒行者と是を・しるべし、其の後良有つて此の法華経の本門の肝心妙法蓮華経は三世の諸仏の万行万善の功徳を集めて五字と為せり、此の五字の内に豈万戒の功徳を納めざらんや、但し此の具足の妙戒は一度持つて後行者破らんとすれど破れず是を金剛宝器戒とや申しけんなんど立つ可し、三世の諸仏は此の戒を持つて法身報身応身なんど何れも無始無終の仏に成らせ給う、此れを「諸教の中に於て之を秘して伝へず」とは天台大師は書き給へり、今末法当世の有智無智在家出家上下万人此の妙法蓮華経を持つて説の如く修行せんに豈仏果を得ざらんや、さてこそ決定無有疑とは滅後濁悪の法華経の行者を定判せさせ給へり、三仏の定判に漏れたる権宗の人人は決定して無間なるべし、是くの如くいみじき戒なれば爾前迹門の諸戒は今一分の功徳なし、功徳無からんに一日の斎戒も無用なり。

但此の本門の戒を弘まらせ給はんには必ず前代未聞の大瑞あるべし、所謂正嘉の地動文永の長星是なるべし、抑当世の人人何の宗宗にか本門の本尊戒壇等を弘通せる、仏滅後二千二百二十余年に一人も候はず、


<前 P1282 次>


満月城岡山ポケット版御書