日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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阿仏房尼御前御返事

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日蓮が弟子檀那の中にも多く此くの如き事共候、さだめて尼御前もきこしめして候らん、一谷の入道の事日蓮が檀那と内には候へども外は念仏者にて候ぞ後生はいかんとすべき、然れども法華経十巻渡して候いしなり。

 弥信心をはげみ給うべし、仏法の道理を人に語らむ者をば男女僧尼必ずにくむべし、よしにくまばにくめ法華経釈迦仏天台妙楽伝教章安等の金言に身をまかすべし、如説修行の人とは是れなり、法華経に云く「恐畏の世に於て能く須臾も説く」云云、悪世末法の時三毒強盛の悪人等集りて候時正法を暫時も信じ持ちたらん者をば天人供養あるべしと云う経文なり。

 此の度大願を立て後生を願はせ給へ少しも謗法不信のとが候はば無間大城疑いなかるべし、譬ば海上を船にのるに船おろそかにあらざれどもあか入りぬれば必ず船中の人人一時に死するなり、なはて堅固なれども蟻の穴あれば必ず終に湛へたる水のたまらざるが如し、謗法不信のあかをとり信心のなはてをかたむべきなり、浅き罪ならば我よりゆるして功徳を得さすべし、重きあやまちならば信心をはげまして消滅さすべし、尼御前の御身として謗法の罪の浅深軽重の義をとはせ給う事まことにありがたき女人にておはすなり、竜女にあにをとるべきや、「我大乗の教を闡いて苦の衆生を度脱せん」とは是なり、「其の義趣を問うは是れ則ち難しと為す」と云つて法華経の義理を問う人はかたしと説かれて候、相構えて相構えて力あらん程は謗法をばせめさせ給うべし、日蓮が義を助け給う事不思議に覚え候ぞ不思議に覚え候ぞ、穴賢穴賢。

=九月三日                           日蓮花押

%阿仏房尼御前御返事


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満月城岡山ポケット版御書