日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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中興入道消息

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かの人人は自行には或は真言を行じ或は般若或は仁王或は阿弥陀仏の名号或は観音或は地蔵或は三千仏或は法華経読誦しをるとは申せども無智の道俗をすすむるにはただ南無阿弥陀仏と申すべし、譬えば女人の幼子をまうけたるに或はほり或はかわ或はひとりなるには母よ母よと申せばききつけぬればかならず他事をすててたすくる習なり、阿弥陀仏も又是くの如し我等は幼子なり阿弥陀仏は母なり地獄のあな餓鬼のほりなんどにをち入りぬれば南無阿弥陀仏と申せば音と響きとの如く必ず来りてすくひ給うなりと一切の智人ども教へ給いしかば我が日本国かく申しならはして年ひさしくなり候。

 然るに日蓮は中国都の者にもあらず辺国の将軍等の子息にもあらず遠国の者民が子にて候いしかば日本国七百余年に一人もいまだ唱へまいらせ候はぬ南無妙法蓮華経と唱え候のみならず、皆人の父母のごとく日月の如く主君の如くわたりに船の如く渇して水のごとくうえて飯の如く思いて候南無阿弥陀仏を無間地獄の業なりと申し候ゆへに食に石をたひたる様にがんせきに馬のはねたるやうに渡りに大風の吹き来たるやうにじゆらくに大火のつきたるやうに俄にかたきのよせたるやうにとわりのきさきになるやうにをどろきそねみねたみ候ゆへに去ぬる建長五年四月二十八日より今弘安二年十一月まで二十七年が間退転なく申しつより候事月のみつるがごとくしほのさすがごとくはじめは日蓮只一人唱へ候いしほどに、見る人値う人聞く人耳をふさぎ眼をいからかし口をひそめ手をにぎりはをかみ父母兄弟師匠ぜんうもかたきとなる、後には所の地頭領家かたきとなる後には一国さはぎ後には万民をどろくほどに、或は人の口まねをして南無妙法蓮華経ととなへ或は悪口のためにとなへ或は信ずるに似て唱へ或はそしるに似て唱へなんどする程に、すでに日本国十分が一分は一向南無妙法蓮華経のこりの九分は或は両方或はうたがひ或は一向念仏者なる者は父母のかたき主君のかたき宿世のかたきのやうにののしる、村主郷主国主等は謀叛の者のごとくあだまれたり、


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満月城岡山ポケット版御書