日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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中興入道消息

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日蓮一切経蔵に入りて勘へたるに真言禅宗念仏律等の権小の人人をもつて法華経をかろしめたてまつる故に梵天帝釈の御とがめにて西なる国に仰せ付けて日本国をせむべしとかんがへて、故最明寺入道殿にまいらせ候いき、此の事を諸道の者、をこつきわらひし程に九箇年すぎて去ぬる文永五年に大蒙古国より日本国ををそうべきよし牒状わたりぬ、此の事のあふ故に念仏者真言師等あだみて失はんとせしなり、例せば漢土に玄宗皇帝と申せし御門の御后に上陽人と申せし美人あり、天下第一の美人にてありしかば楊貴妃と申すきさきの御らんじて此の人王へまいるならば我がをぼへをとりなんとて宣旨なりと申しかすめて、父母兄弟をば或はながし或は殺し上陽人をばろうに入れて四十年までせめたりしなり、此れもそれににて候、日蓮が勘文あらわれて大蒙古国を調伏し日本国かつならば此の法師は日本第一の僧となりなん、我等が威徳をとろうべしと思うかのゆへに讒言をなすをばしろしめさずして、彼等がことばを用いて国を亡さんとせらるるなり、例せば二世王は趙高が讒言によりて李斯を失ひかへりて趙高が為に身をほろぼされ、延喜の御門はしへいのをとどの讒言によりて菅丞相を失いて地獄におち給いぬ、此れも又かくの如し、法華経のかたきたる真言師禅宗律僧持斎念仏者等が申す事を御用いありて日蓮をあだみ給うゆへに、日蓮はいやしけれども所持の法華経を釈迦多宝十方の諸仏梵天帝釈日月四天竜神天照太神八幡大菩薩人の眼をおしむがごとく諸天の帝釈をうやまうがごとく母の子を愛するがごとくまほりおもんじ給うゆへに、法華経の行者をあだむ人を罰し給う事父母のかたきよりも朝敵よりも重く大科に行ひ給うなり。

 然るに貴辺は故次郎入道殿の御子にてをはするなり御前は又よめなりいみじく心かしこかりし人の子とよめとにをはすればや、故入道殿のあとをつぎ国主も御用いなき法華経を御用いあるのみならず法華経の行者をやしなはせ給いてとしどしに千里の道をおくりむかへ去ぬる幼子のむすめ御前の十三年に丈六のそとば(・堵波)をたてて其の面に南無妙法蓮華経の七字を顕してをはしませば、


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満月城岡山ポケット版御書