日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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内房女房御返事

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 然るに今の世の南無阿弥陀仏と申す人人、南無妙法蓮華経と申す人を或は笑ひ或はあざむく、此れは世間の譬に稗の稲をいとひ家主の田苗を憎む是なり、是国将なき時の盗人なり日の出でざる時の・なり、夜打強盗の科めなきが如く地中の自在なるが如し、南無妙法蓮華経と申す国将と日輪とにあはば大火の水に消へ・猴が犬に値うなるべし、当時南無阿弥陀仏の人人南無妙法蓮華経の御声の聞えぬれば、或は色を失ひ或は眼を瞋らし或は魂を滅し或は五体をふるふ、伝教大師云く日出れば星隠れ巧を見て拙きを知る、竜樹菩薩云く謬辞失い易く邪義扶け難し、徳慧菩薩云く面に死喪の色有り言に哀怨の声を含む、法歳云く昔の義虎今は伏鹿なり等云云、此等の意を以て知ぬべし、妙法蓮華経の徳あらあら申し開くべし、毒薬変じて薬となる妙法蓮華経の五字は悪変じて善となる、玉泉と申す泉は石を玉となす此の五字は凡夫を仏となす、されば過去の慈父尊霊は存生に南無妙法蓮華経と唱へしかば即身成仏の人なり、石変じて玉と成るが如し孝養の至極と申し候なり、故に法華経に云く「此の我が二りの子已に仏事を作しぬ」又云く「此の二りの子は是我が善知識なり」等云云。

 乃往過去の世に一の大王あり名を輪陀と申す、此の王は白馬の鳴くを聞きて色もいつくしく力も強く供御を進らせざれども食にあき給ふ他国の敵も冑を脱き掌を合す、又此の白馬鳴く事は白鳥を見て鳴きけり、然るに大王の政や悪しかりけん又過去の悪業や感じけん、白鳥皆失せて一羽もなかりしかば白馬鳴く事なし、白馬鳴かざりければ大王の色も変じ力も衰へ身もかじけ謀も薄くなりし故に国既に乱れぬ、他国よりも兵者せめ来らんに何とかせんに歎きし程に、大王の勅宣に云く国には外道多し皆我が帰依し奉る仏法も亦かくの如し、然るに外道と仏法と中悪し何にしても白馬を鳴かせん方を信じて一方を我が国に失ふべしと云云、爾の時に一切の外道集りて白鳥を現じて白馬を鳴かせんとせしかども白鳥現ずる事なし、昔は雲を出だし霧をふらし風を吹かせ波をたて身の上に火を出だし水を現じ人を馬となし馬を人となし一切自在なりしかども、如何がしけん白鳥を現ずる事なかりき、


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満月城岡山ポケット版御書