日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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内房女房御返事

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爾の時に馬鳴菩薩と申す仏子あり十方の諸仏に祈願せしかば白鳥則出で来りて白馬則鳴けり、大王此を聞食し色も少し出で来り力も付きはだへもあざやかなり、又白鳥又白鳥と千の白鳥出現して千の白馬一時に鶏の時をつくる様に鳴きしかば、大王此の声を聞食し色は日輪の如し膚は月の如し力は那羅延の如し謀は梵王の如し、爾の時に綸言汗の如く出でて返らざれば一切の外道等其の寺を仏寺となしぬ。

 今日本国亦かくの如し、此の国は始めは神代なり漸く代の末になる程に人の意曲り貪瞋癡強盛なれば神の智浅く威も力も少し、氏子共をも守護しがたかりしかば漸く仏法と申す大法を取り渡して人の意も直に神も威勢強かりし程に、仏法に付き謬り多く出来せし故に国あやうかりしかば、伝教大師漢土に渡りて日本と漢土と月氏との聖教を勘へ合せて、おろかなるをば捨て賢きをば取り偏頗もなく勘へ給いて、法華経の三部を鎮護国家の三部と定め置きて候しを、弘法大師慈覚大師智証大師と申せし聖人等、或は漢土に事を寄せ或は月氏に事を寄せて法華経を或は第三第二或は戯論或は無明の辺域等と押し下し給いて、法華経を真言の三部と成さしめて候いし程に、代漸く下剋上し此の邪義既に一国に弘まる、人多く悪道に落ちて神の威も漸く滅し氏子をも守護しがたき故に八十一乃至八十五の五主は或は西海に沈み或は四海に捨てられ今生には大鬼となり後生は無間地獄に落ち給いぬ、然りといえども此の事知れる人なければ改る事なし、今日蓮此の事をあらあら知る故に国の恩を報ぜんとするに日蓮を怨み給ふ。

此等はさて置きぬ氏女の慈父は輪陀王の如し氏女は馬鳴菩薩の如し、白鳥は法華経の如し白馬は日蓮が如し南無妙法蓮華経は白馬の鳴くが如し、大王の聞食して色も盛んに力も強きは、過去の慈父が氏女の南無妙法蓮華経の御音を聞食して仏に成せ給ふが如し。

=弘安三年八月十四日                      日蓮花押


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