日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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盂蘭盆御書

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四男重衡は其の身に縄をつけて京かまくらを引かれて結句なら七大寺にわたされて、十万人の大衆等我等が仏のかたきなりとて一刀づつきざみぬ、悪の中の大悪は我が身に其の苦をうくるのみならず子と孫と末へ七代までもかかり候けるなり、善の中の大善も又又かくのごとし、目蓮尊者が法華経を信じまいらせし大善は我が身仏になるのみならず父母仏になり給う、上七代下七代上無量生下無量生の父母等存外に仏となり給う、乃至子息夫妻所従檀那無量の衆生三悪道をはなるるのみならず皆初住妙覚の仏となりぬ、故に法華経の第三に云く「願くは此の功徳を以て普く一切に及ぼし我等と衆生と皆共に仏道を成ぜん」云云。

 されば此等をもつて思うに貴女は治部殿と申す孫を僧にてもち給へり、此僧は無戒なり無智なり二百五十戒一戒も持つことなし三千の威義一も持たず、智慧は牛馬にるいし威儀は猿猴ににて候へども、あをぐところは釈迦仏信ずる法は法華経なり、例せば・の珠をにぎり竜の舎利を戴くがごとし、藤は松にかかりて千尋をよぢ鶴は羽を恃みて万里をかける此は自身の力にはあらず、治部房も又かくのごとし、我が身は藤のごとくなれども法華経の松にかかりて妙覚の山にものぼりなん、一乗の羽をたのみて寂光の空にもかけりぬべし、此の羽をもつて父母祖父祖母乃至七代の末までもとぶらうべき僧なり、あわれいみじき御たからはもたせ給いてをはします女人かな、彼の竜女は珠をささげて仏となり給ふ、此女人は孫を法華経の行者となしてみちびかれさせ給うべし、事事そうそうにて候へばくはしくは申さず、又又申すべく候、恐恐。

=    七月十三日 日蓮花押

%   治部殿うばごぜん御返事


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満月城岡山ポケット版御書