日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

盂蘭盆御書

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せんするところは目連尊者が乳母の苦をすくわざりし事は、小乗の法を信じて二百五十戒と申す持斎にてありしゆへぞかし、されば浄名経と申す経には浄名居士と申す男目連房をせめて云く汝を供養する者は三悪道に堕つ云云、文の心は二百五十戒のたうとき目連尊者をくやうせん人は三悪道に堕つべしと云云、此又ただ目連一人がきくみみにはあらず、一切の声聞乃至末代の持斎等がきくみみなり、此の浄名経と申すは法華経の御ためには数十番の末への郎従にて候、詮するところは目連尊者が自身のいまだ仏にならざるゆへぞかし、自身仏にならずしては父母をだにもすくいがたしいわうや他人をや。

 しかるに目連尊者と申す人は法華経と申す経にて正直捨方便とて、小乗の二百五十戒立ちどころになげすてて南無妙法蓮華経と申せしかば、やがて仏になりて名号をば多摩羅跋栴檀香仏と申す、此の時こそ父母も仏になり給へ、故に法華経に云く我が願既に満ち衆の望も亦足る云云、目連が色身は父母の遺体なり目連が色身仏になりしかば父母の身も又仏になりぬ。

 例せば日本国八十一代の安徳天皇と申せし王の御宇に平氏の大将安芸の守清盛と申せし人をはしき、度度の合戦に国敵をほろぼして上太政大臣まで官位をきわめ当今はまごとなり、一門は雲客月卿につらなり、日本六十六国島二を掌の内にかいにぎりて候いしが、人を順うこと大風の草木をなびかしたるやうにて候しほどに、心をごり身あがり結句は神仏をあなづりて神人と諸僧を手ににぎらむとせしほどに、山僧と七寺との諸僧のかたきとなりて、結句は去る治承四年十二月二十二日に七寺の内の東大寺興福寺の両寺を焼きはらいてありしかば其の大重罪入道の身にかかりてかへるとし養和元年潤二月四日身はすみのごとく面は火のごとくすみのをこれるがやうにて結句は炎身より出でてあつちじにに死ににき、其の大重罪をば二男宗盛にゆづりしかば西海に沈むとみへしかども東天に浮び出でて、右大将頼朝の御前に縄をつけてひきすへて候き、三男知盛は海に入りて魚の糞となりぬ、


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満月城岡山ポケット版御書