日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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盂蘭盆御書

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本つかいしわらわのたづねゆきて見し時と、目連尊者が母を見しといづれかをろかなるべきかれはいますこしかなしさわまさりけん。

 目連尊者はあまりのかなしさに大神通をげんじ給ひはんをまいらせたりしかば、母よろこびて右の手にははんをにぎり左の手にてははんをかくして口にをし入れ給いしかば、いかんがしたりけんはん変じて火となりやがてもへあがり、とうしびをあつめて火をつけたるがごとくぱともへあがり、母の身のごこごことやけ候しを目連見給いて、あまりあわてさわぎ大神通を現じて大なる水をかけ候しかば、其の水たきぎとなりていよいよ母の身のやけ候し事こそあはれには候しが、其の時目連みずからの神通かなわざりしかばはしりかへり須臾に仏にまいりてなげき申せしやうは、我が身は外道の家に生れて候しが仏の御弟子になりて阿羅漢の身をへて、三界の生をはなれ三明六通の羅漢とはなりて候へども、乳母の大苦をすくはんとし候にかへりて大苦にあわせて候は、心うしとなげき候しかば、仏け説いて云く汝が母はつみふかし汝一人が力及ぶべからず、又何の人なりとも天神地神邪魔外道道士四天王帝釈梵王の力も及ぶべからず、七月十五日に十方の聖僧をあつめて百味をんじきをととのへて母のくをはすくうべしと云云、目連仏の仰せのごとく行いしかば其の母は餓鬼道一劫の苦を脱れ給いきと、盂蘭盆経と申す経にとかれて候、其によって滅後末代の人人は七月十五日に此の法を行い候なり、此は常のごとし。

 日蓮案じて云く目連尊者と申せし人は十界の中に声聞道の人二百五十戒をかたく持つ事石のごとし、三千の威儀を備えてかけざる事は十五夜の月のごとし、智慧は日ににたり神通は須弥山を十四さうまき大山をうごかせし人ぞかし、かかる聖人だにも重報の乳母の恩ほうじがたし、あまさへほうぜんとせしかば大苦をまし給いき、いまの僧等の二百五十戒は名計りにて事をかいによせて人をたぼらかし一分の神通もなし、大石の天にのぼらんとせんがごとし、智慧は牛にるいし羊にことならず、設い千万人をあつめたりとも父母の一苦すくうべしや、


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満月城岡山ポケット版御書