日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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新池殿御消息

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法華経にて仏に成り給ふ普明如来是なり、此の太子の因位を尋ぬればうへたる世にひえの飯を辟支仏と申す僧に供養せし故ぞかし、辟支仏を供養する功徳すら此くの如し、況や法華経の行者を供養せん功徳は無量無辺の仏を供養し進らする功徳にも勝れて候なり。

 抑日蓮は日本国の者なり、此の国は南閻浮提七千由旬の内に八万四千の国あり十六の大国五百の中国十千の小国無量の粟散国あり、其の中に月氏国と申す国は大国なり、彼の国に五天竺あり、其れより東海の中に小島あり日本国是なり、中天竺よりは十万余里の東なり、仏教は仏滅度後正法一千年が間は天竺にとどまりて余国にわたらず、正法一千年の末像法に入つて一十五年と申せしに漢土へ渡る、漢土に三百年すぎて百済国に渡る、百済国に一百年已上一千四百十五年と申せしに人王三十代欽明天皇の御代に日本国に始めて釈迦仏の金銅の像と一切経は渡りて候いき、今七百余年に及び候、其の間一切経は五千余巻或は七千余巻なり、宗は八宗九宗十宗なり、国は六十六箇国二つの島神は三千余社仏は一万余寺なり、男女よりも僧尼は半分に及べり、仏法の繁昌は漢土にも勝れ天竺にもまされり。

 但し仏法に入つて諍論あり、浄土宗の人人は阿弥陀仏を本尊とし真言の人人は大日如来を本尊とす禅宗の人人は経と仏とをば閣いて達磨を本尊とす、余宗の人人は念仏者真言等に随へられ何れともなけれどもつよきに随ひ多分に押されて阿弥陀仏を本尊とせり、現在の主師親たる釈迦仏を閣きて他人たる阿弥陀仏の十万億の他国へにげ行くべきよしをねがはせ給い候、阿弥陀仏は親ならず主ならず師ならず、されば一経の内虚言の四十八願を立て給いたりしを愚なる人人実と思いて物狂はしく金拍子をたたきおどりはねて念仏を申し親の国をばいとひ出でぬ、来迎せんと約束せし阿弥陀仏の約束の人は来らず中有のたびの空に迷いて謗法の業にひかれて三悪道と申す獄屋へおもむけば獄卒阿防羅刹悦びをなしとらへからめてさひなむ事限りなし、


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満月城岡山ポケット版御書