日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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高橋入道殿御返事 /建治元年七月

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此の事一年二年ならず数年調伏せしに権の大夫殿はゆめゆめしろしめさざりしかば一法も行じ給はず又行ずとも叶うべしともをぼへずありしに天子いくさにまけさせ給いて隠岐の国へつかはされさせ給う、日本国の王となる人は天照太神の御魂の入りかわらせ給う王なり、先生の十善戒の力といひいかでか国中の万民の中にはかたぶくべき、設いとがありともつみあるをやを失なき子のあだむにてこそ候いぬらめ、設い親に重罪ありとも子の身として失に行はんに天うけ給うべしや、しかるに隠岐の法皇のはぢにあはせ給いしはいかなる大禍ぞ此れひとへに法華経の怨敵たる日本国の真言師をかたらはせ給いしゆへなり。

 一切の真言師は潅頂と申して釈迦仏等を八葉の蓮華にかきて此れを足にふみて秘事とするなり、かかる不思議の者ども諸山諸寺の別当とあおぎてもてなすゆへにたみの手にわたりて現身にはぢにあひぬ、此の大悪法又かまくらに下つて御一門をすかし日本国をほろぼさんとするなり、此の事最大事なりしかば弟子等にもかたらず只いつはりをろかにて念仏と禅等計りをそしりてきかせしなり、今は又用いられぬ事なれば身命もおしまず弟子どもにも申すなり、かう申せばいよいよ御不審あるべし、日蓮いかにいみじく尊くとも慈覚弘法にすぐるべきか、この疑すべてはるべからずいかにとかすべき。

 但し皆人はにくみ候にすこしも御信用のありし上此れまでも御たづねの候は只今生計りの御事にはよも候はじ定めて過去のゆへか、御所労の大事にならせ給いて候なる事あさましく候、但しつるぎはかたきのため薬は病のため、阿闍世王は父をころし仏の敵となれり、悪瘡身に出で後に仏に帰伏し法華経を持ちしかば悪瘡も平癒し寿をも四十年のべたりき、而も法華経は閻浮提人病之良薬とこそとかれて候へ、閻浮の内の人は病の身なり法華経の薬あり、三事すでに相応しぬ一身いかでかたすからざるべき、但し御疑のわたり候はんをば力をよばず、南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経。


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