日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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薬王品得意抄 /文永二年

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生死の此岸より生死の彼岸には付くと雖も生死の大海を渡り極楽の彼岸にはとつきがたし、例せば世間の小船等が筑紫より坂東に至り鎌倉よりいの嶋なんどへとつけども唐土へ至らず唐船は必ず日本国より震旦国に至るに障り無きなり又云く「貧きに宝を得たるが如し」等云云、爾前の国は貧国なり爾前の人は餓鬼なり法華経は宝の山なり人は富人なり。

 問うて云く爾前は貧国といふ経文如何答えて云く授記品に云く「飢えたる国より来つて忽ちに大王の膳に遇へるが如く」等云云、女人の往生成仏の段は経文に云く「若し如来の滅後後の五百歳の中に若し女人有つて是の経典を聞いて説の如く修行せば此に於て命終して即ち安楽世界阿弥陀仏の菩薩大衆に囲遶せられて住する処に往いて蓮華の中宝座の上に生じ」等云云。

 問うて日く此の経此の品に殊に女人の往生を説く何の故か有るや、答えて日く仏意測り難し此の義決し難きか但し一の料簡を加えば女人は衆罪の根本破国の源なり、故に内典外典に多く之を禁しむ其の中に外典を以て之を論ずれば三従あり三従と申すは三したがうと云ふなり、一には幼にしては父母に従う嫁して夫に従う老いて子に従う此の三障有りて世間自在ならず、内典を以て之を論ずれば五障有り五障とは一には六道輪回の間男子の如く大梵天王と作らず二には帝釈と作らず三には魔王と作らず四には転輪聖王と作らず五には常に六道に留まりて三界を出でて仏に成らず[超日月三昧経の文なり]、銀色女経に云く「三世の諸仏の眼は大地に堕落すとも法界の諸の女人は永く成仏の期無し」等云云、但し凡夫すら賢王聖人は妄語せずはんよき(樊於期)といゐし者はけいかに頚をあたいきさつと申せし人は徐君が塚に剣をかけたりきこれ約束を違えず妄語無き故なり何に況や声聞菩薩仏をや、仏は昔凡夫にてましましし時小乗経を習い給いし時五戒を受け始め給いき五戒の中の第四の不妄語の戒を固く持ち給いき財を奪われ命をほろぼされし時も此の戒をやぶらず大乗経を習い給いし時又十重禁戒を持ち其の十重禁戒の中の第四の不妄語戒を持ち給いき、


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