日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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上野殿後家尼御返事

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 竜樹菩薩の云く「譬えば大薬師の能く毒を変じて薬と為すが如し」云云、妙楽大師云く「豈伽耶を離れて別に常寂を求めん寂光の外別に娑婆有るに非ず」云云、又云く「実相は必ず諸法諸法は必ず十如十如は必ず十界十界は必ず身土なり」云云、法華経に云く「諸法実相乃至本末究竟等」云云、寿量品に云く「我実に成仏してより已来無量無辺なり」等云云、此の経文に我と申すは十界なり十界本有の仏なれば浄土に住するなり、方便品に云く「是の法は法位に住して世間の相常住なり」云云、世間のならひとして三世常恒の相なればなげくべきにあらずをどろくべきにあらず、相の一字は八相なり八相も生死の二字をいでず、かくさとるを法華経の行者の即身成仏と申すなり、故聖霊は此の経の行者なれば即身成仏疑いなし、さのみなげき給うべからず、又なげき給うべきが凡夫のことわりなり、ただし聖人の上にもこれあるなり、釈迦仏御入滅のとき諸大弟子等のさとりのなげき凡夫のふるまひを示し給うか。

 いかにもいかにも追善供養を心のをよぶほどはげみ給うべし、古徳のことばにも心地を九識にもち修行をば六識にせよとをしへ給うことわりにもや候らん、此の文には日蓮が秘蔵の法門かきて候ぞ、秘しさせ給へ秘しさせ給へ、あなかしこあなかしこ。

=  七月十一日                   日蓮花押

%   上野殿後家尼御前御返事


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満月城岡山ポケット版御書