日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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神国王御書

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日月の光明の能く諸の幽冥を除くが如く斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す」等云云、文の心は此の法華経を一字も一句も説く人は必ず一代聖教の浅深と次第とを能く能く弁えたらむ人の説くべき事に候、譬へば暦の三百六十日をかんがうるに一日も相違せば万日倶に反逆すべし、三十一字を連ねたる一句一字も相違せば三十一字共に歌にて有るべからず、謂る一経を読誦すとも始め寂滅道場より終り雙林最後にいたるまで次第と浅深とに迷惑せば其の人は我が身に五逆を作らずして無間地獄に入り此れを帰依せん檀那も阿鼻大城に堕つべし何に況や智人一人出現して一代聖教の浅深勝劣を弁えん時元祖が迷惑を相伝せる諸僧等或は国師となり或は諸家の師となりなんどせる人人自のきずが顕るる上人にかろしめられん事をなげきて、上に挙ぐる一人の智人を或は国主に訴へ或は万人にそしらせん、其の時守護の天神等の国をやぶらん事は芭蕉の葉を大風のさき小舟を大波のやぶらむがごとしと見へて候。

 無量義経は始め寂滅道場より終り般若経にいたるまでの一切経を或は名を挙げ或は年紀を限りて未顕真実と定めぬ、涅槃経と申すは仏最後の御物語に初め初成道より五十年の諸教の御物語四十余年をば無量義経のごとく邪見の経と定め法華経をば我が主君と号し給う、中に法華経ましまして已今当の勅宣を下し給いしかば多宝十方の諸仏加判ありて各各本土にかへり給いしを月氏の付法蔵の二十四人は但小乗権大乗を弘通して法華経の実義を宣べ給う事なし、譬へば日本国の行基菩薩と鑒真和尚との法華経の義を知り給いて弘通なかりしがごとし、漢土の南北の十師は内にも仏法の勝劣を弁えず外にも浅深に迷惑せり、又三論宗の吉蔵華厳宗の澄観法相宗の慈恩此れ等の人人は内にも迷い外にも知らざりしかども道心堅固の人人なれば名聞をすてて天台の義に付きにき、知らずされば此の人人は懺悔の力に依りて生死やはなれけむ、将た又謗法の罪は重く懺悔の力は弱くして阿闍世王無垢論師等のごとく地獄にや堕ちにけん。


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満月城岡山ポケット版御書