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P1562 次>文をこのむ王に武のすてられいろをこのむ人に正直物のにくまるるがごとく念仏と禅と真言と律とを信ずる代に値うて法華経をひろむれば王臣万民ににくまれて結句は山中に候へば天いかんが計らわせ給うらむ、五尺のゆきふりて本よりもかよわぬ山道ふさがりといくる人もなし、衣もうすくてかんふせぎがたし食たへて命すでにをはりなんとす、かかるきざみにいのちさまたげの御とぶらひかつはよろこびかつはなけかし、一度にをもひ切つてうへしなんとあんじ切つて候いつるにわづかのともしびにあぶらを入そへられたるがごとし、あわれあわれたうとくめでたき御心かな、釈迦仏法華経定めて御計らい給はんか、恐恐謹言。
= 弘安二年十二月廿七日 日蓮花押
% 上野殿御返事
十字六十枚清酒一筒薯蕷五十本柑子二十串柿一連送り給び候い畢んぬ、法華経の御宝前にかざり進らせ候、春の始め三日種種の物法華経の御宝前に捧げ候い畢んぬ。
花は開いて果となり月は出でて必ずみち燈は油をさせば光を増し草木は雨ふればさかう人は善根をなせば必ずさかう、其の上元三の御志元一にも超へ、十字の餅満月の如し、事事又又申すべく候。
=弘安三年庚辰正月十一日 日蓮花押
% 上野殿
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