日蓮大聖人御書
ネット御書
(曾谷入道殿許御書)
<1.前 P1033 2.次>

 問うて日く其の証拠如何、法華第五涌出品に云く「爾の時に他方の国土より諸の来れる菩薩摩訶薩の八恒河沙の数に過ぎたる乃至爾の時に仏諸の菩薩摩訶薩衆に告げたまわく止みね善男子汝等が此の経を護持せんことを須いじ」等云云、天台云く「他方は此の土結縁の事浅し宣授せんと欲すと雖も必ず巨益無し」云云、妙楽云く「尚偏に他方の菩薩に付せず豈独り身子のみならんや」云云、又云く「告八万大士とは乃至今の下の文に下方を召すが如く尚本眷属を待つ験し余は未だ堪えざることを」云云、経釈の心は迦葉舎利弗等の一切の声聞文殊薬王観音弥勒等の迹化他方の諸大士は末世の弘経に堪えずと云うなり、経に云く「我が娑婆世界に自ら六万恒河沙等の菩薩摩訶薩有り一一の菩薩に各六万恒河沙の眷属有り是の諸人等能く我が滅後に於て護持し読誦し広く此の経を説かん、仏是を説きたもう時娑婆世界の三千大千の国土地皆震裂して其の中より無量千万億の菩薩摩訶薩有り同時に涌出せり、乃至是の菩薩衆の中に四たり導師有り一をば上行と名け二をば無辺行と名け三をば浄行と名け四をば安立行と名く其の衆の中に於て最も為上首唱導の師なり」等云云、天台云く「是れ我が弟子応に我が法を弘むべし」云云、妙楽云く「子父の法を弘む」云云道暹云く「付属とは此の経は唯下方涌出の菩薩に付す何が故に爾る法是れ久成の法なるに由るが故に久成の人に付す」等云云、此等の大菩薩末法の衆生を利益したもうこと猶魚の水に練れ鳥の天に自在なるが如し、濁悪の衆生此の大士に遇つて仏種を殖うること例せば水精の月に向つて水を生じ孔雀の雷の声を聞いて懐妊するが如し、天台云く「猶百川の海に潮すべきが如し縁に牽れて応生するも亦復是くの如し」云云。
 慧日大聖尊仏眼を以て兼ねて之を鑒みたもう故に諸の大聖を捨棄し此の四聖を召し出して要法を伝え末法の弘通を定むるなり、問うて日く要法の経文如何、答えて日く口伝を以て之を伝えん釈尊然後正像二千年の衆生の為に宝塔より出でて虚空に住立し右の手を以て文殊観音梵帝日月四天等の頂を摩でて


<1.前 P1033 2.次>