日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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八幡宮造営事 /弘安四年五月 六十歳御作

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さては八幡宮の御造営につきて一定さむそうや有らんずらむと疑いまいらせ候なり、をやと云ひ我が身と申し二代が間きみにめしつかはれ奉りてあくまで御恩のみなり、設一事相違すともなむのあらみかあるべき、わがみ賢人ならば設上よりつかまつるべきよし仰せ下さるるとも一往はなに事につけても辞退すべき事ぞかし、幸に讒臣等がことを左右によせば悦んでこそあるべきに望まるる事一の失なり、此れはさてをきぬ五戒を先生に持ちて今生に人身を得たり、されば云うに甲斐なき者なれども国主等謂なく失にあつれば守護の天いかりをなし給う況や命をうばわるる事は天の放ち給うなり、いわうや日本国四十五億八万九千六百五十九人の男女をば四十五億八万九千六百五十九の天まほり給うらん、然るに他国よりせめ来る大難は脱るべしとも見え候はぬは、四十五億八万九千六百五十九人の人人の天にも捨てられ給う上六欲四禅梵釈日月四天等にも放たれまいらせ給うにこそ候いぬれ、然るに日本国の国主等八幡大菩薩をあがめ奉りなばなに事のあるべきと思はるるが、八幡は又自力叶いがたければ宝殿を焼きてかくれさせ給うか、然るに自の大科をばかへりみず宝殿を造りてまほらせまいらせむとおもへり。

日本国の四十五億八万九千六百五十九人の一切衆生が釈迦多宝十方分身の諸仏地涌と娑婆と他方との諸大士十方世界の梵釈日月四天に捨てられまひらせん分斉の事ならばはづかなる日本国の小神天照太神八幡大菩薩の力及び給うべしや、其の時八幡宮はつくりたりとも此の国他国にやぶらればくぼきところにちりたまりひききところに水あつまると、日本国の上一人より下万民にいたるまでさたせむ事は兼て又知れり、八幡大菩薩は本地は阿弥陀ほとけにまします、衛門の大夫は念仏無間地獄と申す阿弥陀仏をば火に入れ水に入れ其の堂をやきはらひ念仏者のくびを切れと申す者なり、かかる者の弟子檀那と成りて候が八幡宮を造りて候へども八幡大菩薩用いさせ給はぬゆへに此の国はせめらるるなりと申さむ時はいかがすべき、


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