日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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善無畏抄 /建治元年 五十四歳御作

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女人に於ては一向諸経に於ては叶う可からずと書かれて候、縦令千万の経経に女人成る可しと許され為りと雖も法華経に嫌われなば何の憑か有る可きや。

 教主釈尊我が諸経四十余年の経経を未顕真実と悔い返し涅槃経等をば当説と嫌い給い無量義経をば今説と定め置き、三説に秀でたる法華経に「正直に方便を捨て但無上道を説く世尊の法は久しくして後要当に真実を説くべし」と釈尊宣べ給いしかば、宝浄世界の多宝仏は大地より出でさせ給いて真実なる由の証明を加え、十方分身の諸仏広長舌を梵天に付け給う、十方世界微塵数の諸仏の舌相は不妄語戒の力に酬いて八葉の赤蓮華に生出させ給いき、一仏二仏三仏乃至十仏百仏千万億仏の四百万億那由佗の世界に充満せる仏の御舌を以て定め置き給える女人成仏の義なり、謗法無くして此の経を持つ女人は十方虚空に充満せる慳貪嫉妬瞋恚十悪五逆なりとも草木の露の大風にあえるなる可し三冬の冰の夏の日に滅するが如し、但滅し難き者は法華経謗法の罪なり、譬えば三千大千世界の草木を薪と為すとも須弥山は一分も損じ難し、縦令七つの日出でて百千日照すとも大海の中をばかわかしがたし、設い八万聖教を読み大地微塵の塔婆を立て大小乗の戒行を尽し十方世界の衆生を一子の如くに為すとも法華経謗法の罪はきゆべからず、我等過去現在未来の三世の間に仏に成らずして六道の苦を受くるは偏に法華経誹謗の罪なるべし、女人と生れて百悪身に備ふるも根本此の経誹謗の罪より起れり。

 然者此の経に値い奉らむ女人は皮をはいで紙と為し血を切りて墨と為し骨を折りて筆と為し血の涙を硯の水と為して書き奉ると雖も飽く期あるべからず、何に況や衣服金銀牛馬田畠等の布施を以て供養せむはもののかずにてかずならず。


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