日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

一谷入道御書

<前 P1327 次>


譬えば虫の火に入り鳥の蛇の口に入るが如し真言師華厳宗法相三論禅宗浄土宗律宗等の人人は我も法を得たり我も生死を離れたる人とは思へども立始めし本師等依経の心をも弁えず、但我が心の思い付いて有りしままに其の経を取り立てんと思へる墓無き心計りにて法華経に背けば又仏意にも叶わざる事をば知らずして弘め行く程に国主万民是を信じぬ又他国へ渡り又年久しく成りぬ、末学の者共本師の誤をば知らずして弘め習ひし人人をも智者とは思へり、源濁りぬれば流浄からず身曲りぬれば影直からず、真言の元祖善無畏等は既に地獄に堕ちぬべかりしが或は改悔して地獄を免れたる者もあり、或は唯依経を弘めて法華経の讃歎をもせざれば生死は離れねども悪道に堕ちざる人もあり、而るを末末の者此の事を知らずして諸人一同に信をなしぬ、譬えば破たる船に乗つて大海に浮び酒に酔る者の火の中に臥せるが如し。

 日蓮是を見し故に忽に菩提心を発して此の事を申し始めしなり、世間の人人何に申すとも信ずる事はあるべからず、還つて流罪死罪せらるべしとは兼て知つてありしかども今の日本国は法華経に背き釈迦仏を捨つる故に後生は必ず無間大城に堕ちん事はさておきぬ今生にも必ず大難に値うべし、所謂他国より責め来つて上一人より下万民に至るまで一同の歎きあるべし、譬えば千人の兄弟が一人の親を殺したらんに此の罪を千に分ては受くべからず、一一に皆無間大城に堕ちて同じく一劫を経べし、此の国も又又是くの如し、娑婆世界は五百塵点劫より已来教主釈尊の御所領なり、大地虚空山海草木一分も他仏の有ならず、又一切衆生は釈尊の御子なり、譬えば成劫の始め一人の梵王下つて六道の衆生をば生て候ぞかし、梵王の一切衆生の親たるが如く釈迦仏も又一切衆生の親なり、又此の国の一切衆生のためには教主釈尊は明師にておはするぞかし、父母を知るも師の恩なり黒白を弁うも釈尊の恩なり、而るを天魔の身に入つて候善導法然なんどが申すに付いて国土に阿弥陀堂を造り或は一郡一郷一村等に阿弥陀堂を造り或は百姓万民の宅のごとに阿弥陀堂を造り或は宅宅人人ごとに阿弥陀仏を書造り


<前 P1327 次>


満月城岡山ポケット版御書