日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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三沢抄 /建治四年二月

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それにかなわずばかれが弟子だんな並に国土の人の心の内に入りかわりてあるひはいさめ或はをどしてみよそれに叶はずば我みづからうちくだりて国主の身心に入りかわりてをどして見むにいかでかとどめざるべきとせんぎし候なり。

 日蓮さきよりかかるべしとみほどき候いて末代の凡夫の今生に仏になる事は大事にて候いけり釈迦仏の仏にならせ給いし事を経経にあまたとかれて候に第六天の魔王のいたしける大難いかにも忍ぶべしともみへ候はず候、提婆達多阿闍世王の悪事はひとへに第六天の魔王のたばかりとこそみて候へ、まして如来現在猶多怨嫉況滅度後と申して大覚世尊の御時の御難だにも凡夫の身日蓮にかやうなる者は片時一日も忍びがたかるべし、まして五十余年が間の種種の大難をや、まして末代には此等は百千万億倍すぐべく候なる大難をばいかでか忍び候べきと心に存して候いしほどに聖人は未萠を知ると申して三世の中に未来の事を知るをまことの聖人とは申すなり、而るに日蓮は聖人にあらざれども日本国の今の代にあたりて此の国亡亡たるべき事をかねて知りて候いしに此れこそ仏のとかせ給いて候況滅度後の経文にあたりて候へ、此れを申しいだすならば仏の指させ給いて候未来の法華経の行者なり、知りて而かも申さずば世世生生の間をうしことどもり生ん上教主釈尊の大怨敵其の国の国主の大讎敵他人にあらず、後生は又無間大城の人此れなりとかんがへみて或は衣食にせめられ或は父母兄弟師匠同行にもいさめられ或は国主万民にもをどされしにすこしもひるむ心あるならば一度に申し出ださじととしごろひごろ心をいましめ候いしが抑過去遠遠劫より定めて法華経にも値い奉り菩提心もをこしけん、なれども設い一難二難には忍びけれども大難次第につづき来りければ退しけるにや、今度いかなる大難にも退せぬ心ならば申し出すべしとて申し出して候いしかば経文にたがわず此の度度の大難にはあいて候いしぞかし。


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