日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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南条兵衛七郎殿御書 /文永元年十二月

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当世の人人は謗法の者としろしめすべし[是二]。

 仏入滅の次の日より千年をば正法と申して持戒の人多く得道の人これあり。正法千年の後は像法千年なり破戒の者は多く得道すくなし、像法千年の後は末法万年なり持戒もなし破戒もなし無戒の者のみ国に充満せん、而も濁世と申してみだれたる世なり、清世と申してすめる世には直繩のまがれる木をけづらするやうに非をすて是を用うるなり、正像より五濁やうやういできたりて末法になり候へば五濁さかりにすぎて、大風の大波を起して岸を打つのみならず又波と波とをうつなり、見濁と申すは正像やうやうすぎぬれば、わづかの邪法の一つをつたへて無量の正法をやぶり世間の罪にて悪道におつるものよりも仏法を以て悪道に堕つるもの多しとみへはんべり。

 しかるに当世は正像二千年すぎて末法に入つて二百余年、見濁さかりにして悪よりも善根にて多く悪道に堕つべき時刻なり 悪は愚癡の人も悪としればしたがはぬ辺もあり火を水を以てけすが如し、善は但善と思ふほどに小善に付いて大悪の起る事をしらず、所以に伝教慈覚等の聖跡ありすたれあばるれども念仏堂にあらずといひてすてをきてそのかたはらにあたらしく念仏堂をつくり彼の寄進の田畠をとりて念仏堂によす、此等は像法決疑経の文の如くならば功徳すくなしとみへはべり、これらをもつてしるべし善なれども大善をやぶる小善は悪道に堕つるなるべし、今の世は末法のはじめなり、小乗経の機権大乗経の機皆うせはてて唯実大乗経の機のみあり、小船には大石をのせず悪人愚者は大石のごとし、小乗経並に権大乗経念仏等は小船なり、大悪瘡の湯治等は病大なれば小治およばず、末代濁世の我等には念仏等はたとへば冬田を作るが如し時があはざるなり[是三知]。

 国をしるべし国に随つて人の心不定なり、たとへば江南の橘の淮北にうつされてからたちとなる、


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