日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

[目次]

南条兵衛七郎殿御書 /文永元年十二月

<前 P1497 次>


さきに外道の法弘まれる国ならば仏法をもつてこれをやぶるべし、仏の印度にいでて外道をやぶりまとうか(摩騰迦)ぢくほうらん(竺法蘭)の震旦に来つて道士をせめ上宮太子和国に生れて守屋をきりしが如し、仏教においても小乗の弘まれる国をば大乗経をもつてやぶるべし、無著菩薩の世親の小乗をやぶりしが如し、権大乗の弘まれる国をば実大乗をもつてこれをやぶるべし、天台智者大師の南三北七をやぶりしが如し、而るに日本国は天台真言の二宗のひろまりて今に四百余歳、比丘比丘尼うばそく(優婆塞)うばひの四衆皆法華経の機と定りぬ、善人悪人有智無智皆五十展転の功徳をそなふ、たとへば崑崙山に石なく蓬莱山に毒なきが如し、而るを此の五十余年に法然といふ大謗法の者いできたりて、一切衆生をすかして珠に似たる石をもつて珠を投させ石をとらせたるなり、止観の五に云く「瓦礫を貴んで明珠なりと申す」は是なり、一切衆生石をにぎりて珠とおもふ、念仏を申して法華経をすてたる是なり、此の事をば申せば還つてはらをたち法華経の行者をのりてことに無間の業をますなり[是五]。

 但とのはこのぎをきこしめして念仏をすて法華経にならせ給いてはべりしが、定めてかへりて念仏者にぞならせ給いてはべるらん、法華経をすてて念仏者とならせ給はんは峯の石の谷へころび空の雨の地におつるとおぼせ大阿鼻地獄疑なし、大通結縁の者の三千塵点劫を久遠下種の者の五百塵点を経し事、大悪知識にあいて法華経をすてて念仏等の権教にうつりし故なり、一家の人人念仏者にてましましげに候いしかばさだめて念仏をぞすすめまいらせ給い候らん、我が信じたる事なればそれも道理にては候へども悪魔の法然が一類にたぼらかされたる人人なりとおぼして大信心を起し御用いあるべからず、大悪魔は貴き僧となり父母兄弟等につきて人の後世をば障るなり、いかに申すとも法華経をすてよとたばかりげに候はんをば御用いあるべからず、まづ御きやうさくあるべし。

 念仏実に往生すべき証文つよくば此の十二年が間念仏者無間地獄と申すをばいかなるところへ申しいだしてもつめずして候べきか、


<前 P1497 次>


満月城岡山ポケット版御書