日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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上野殿御返事

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今日蓮は賢人にもあらずまして聖人はおもひもよらず天下第一の僻人にて候が但経文計りにはあひて候やうなれば大難来り候へば父母のいきかへらせ給いて候よりもにくきもののことにあふよりもうれしく候なり、愚者にて而も仏に聖人とおもはれまいらせて候はん事こそうれしき事にて候へ、智者たる上二百五十戒かたくたもちて万民には諸天の帝釈をうやまふよりもうやまはれて釈迦仏法華経に不思議なり提婆がごとしとおもはれまいらせなば人目はよきやうなれども後生はおそろしおそろし。

 さるにては殿は法華経の行者ににさせ給へりとうけ給はればもつてのほかに人のしたしきもうときも日蓮房を信じてはよもまどいなん上の御気色もあしかりなんとかたうどなるやうにて御けうくむ候なれば賢人までも人のたばかりはおそろしき事なれば一定法華経すて給いなん、なかなか色みへでありせばよかりなん、大魔のつきたる者どもは一人をけうくんしをとしつればそれをひつかけにして多くの人をせめをとすなり。

 日蓮が弟子にせう房と申しのと房といゐなごえの尼なんど申せし物どもはよくふかく心をくびやうに愚癡にして而も智者となのりしやつばらなりしかば事のをこりし時たよりをえておほくの人をおとせしなり、殿もせめをとされさせ給うならばするがにせうせう信ずるやうなる者も又信ぜんとおもふらん人人も皆法華経をすつべし、さればこの甲斐の国にも少少信ぜんと申す人人候へどもおぼろげならでは入れまいらせ候はぬにて候、なかなかしき人の信ずるやうにてなめりて候へば人の信心をもやぶりて候なり。

 ただをかせ給へ梵天帝釈等の御計として日本国一時に信ずる事あるべし、爾時我も本より信じたり信じたりと申す人こそおほくをはせずらんとおぼえ候、御信用あつくをはするならば人ためにあらず我が故父の御ため人は我がをやの後世にはかはるべからず子なれば我こそ故をやの後世をばとぶらふべけれ、郷一郷知るならば半郷は父のため半郷は妻子眷属をやしなふべし、


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満月城岡山ポケット版御書