日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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上野殿御返事

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我が命は事出できたらば上にまいらせ候べしとひとへにおもひきりて何事につけても言をやわらげて法華経の信をうすくなさんずるやうをたばかる人出来せば我が信心をこころむるかとおぼして各各これを御けうくんあるはうれしき事なり、ただし御身のけうくんせさせ給へ、上の御信用なき事はこれにもしりて候を上をもつておどさせ給うこそかしく候へ、参りてけうくん申さんとおもひ候つるにうわてうたれまいらせて候、閻魔王に我が身といとをしとおぼす御めと子とをひつぱられん時は時光に手をやすらせ給い候はんずらんとにくげにうちいひておはすべし。

 にいた殿の事まことにてや候らん、をきつの事きこへて候、殿もびんき候はば其の義にて候べし、かまへておほきならん人申しいだしたるらんはあはれ法華経のよきかたきよ、優曇華か盲亀の浮木かとおぼしめしてしたたかに御返事あるべし。

 千丁万丁しる人もわづかの事にたちまちに命をすて所領をめさるる人もあり、今度法華経のために命をすつる事ならばなにはをしかるべき、薬王菩薩は身を千二百歳が間やきつくして仏になり給い檀王は千歳が間身をゆかとなして今の釈迦仏といはれさせ給うぞかし、さればひが事をすべきにはあらず、今はすてなばかへりて人わらはれになるべし、かたうどなるやうにてつくりおとして、我もわらひ人にもわらはせんとするがきくわいなるによくよくけうくんせさせて人のおほくきかんところにて人をけうくんせんよりも我が身をけうくんあるべしとてかつぱとたたせ給へ、一日二日が内にこれへきこへ候べし、事おほければ申さず又又申すべし、恐恐謹言。

= 建治三年五月十五日 日蓮花押

%  上野殿御返事


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