日蓮大聖人御書全集 創価学会版
(ポケット版御書)

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衆生身心御書

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所謂一代第一は華厳経第二は涅槃経第三は法華経此の義は上一人より下万民にいたるまで異義なし、大聖とあうぎし法雲法師智蔵法師等の十師の義一同なりしゆへなり。

 而るを像法の中の陳隋の代に智・と申す小僧あり後には智者大師とがうす、法門多しといへども詮するところ法華涅槃華厳経の勝劣の一つ計りなり、智・法師云く仏法さかさまなり云云、陳主此の事をたださんがために南北の十師の最頂たる恵・僧上恵光僧都恵栄法歳法師等の百有余人を召し合わせられし時法華経の中には「諸経の中に於て最も其の上に在り」等云云、又云く「已今当説最為難信難解」等云云、已とは無量義経に云く「摩訶般若華厳海空」等云云、当とは涅槃経に云く「般若はら蜜より大涅槃を出だす」等云云、此の経文は華厳経涅槃経には法華経勝ると見ゆる事赫赫たり明明たり御会通あるべしとせめしかば、或は口をとぢ或は悪口をはき或は色をへんじなんどせしかども、陳主立つて三拝し百官掌をあわせしかば力及ばずまけにき。

 一代の中には第一法華経にてありしほどに像法の後の五百に新訳の経論重ねてわたる大宗皇帝の貞観三年に玄奘と申す人あり月支に入りて十七年五天の仏法を習いきわめて貞観十九年に漢土へわたりしが深密経瑜伽論唯識論法相宗をわたす、玄奘云く「月支に宗宗多しといへども此の宗第一なり」大宗皇帝は又漢土第一の賢王なり玄奘を師とす、此の宗の所詮に云く「或は三乗方便一乗真実」或は一乗方便三乗真実又云く「五性は各別なり決定性と無性の有情は永く仏に成らず」等と云云、此の義は天台宗と水火なり而も天台大師と章安大師は御入滅なりぬ其の已下の人人は人非人なりすでに天台宗破れてみへしなり。

 其の後則天皇后の御世に華厳宗立つ前に天台大師にせめられし六十巻の華厳経をばさしをきて後に日照三蔵のわたせる新訳の華厳経八十巻をもつて立てたり、此の宗のせんにいわく華厳経は根本法輪法華経は枝末法輪等云云、則天皇后は尼にてをはせしが内外典にこざかしき人なり、慢心たかくして天台宗をさげをぼしてありしなり、


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満月城岡山ポケット版御書